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サイト開設記念連載企画 講師誕生!人はいかにして「教える人」となるのか

第4回:山田淳子さん(株式会社アツコ バウンス 代表取締役)後篇

サイト開設を記念し、連載スタートした<講師誕生~人はいかにして「教える人」になるのか>の第4回目。

前回に続き、小児病棟での患児ケアの後、普通の主婦としての時代を経て、現在は講演会や企業研修の講師として活躍されている山田淳子さんがゲストです。

前回は、講師になるまでのお話が中心でしたが、今回は、「プロのコーチ・講師」としての現在の活躍ぶりや、仕事を通じた発見などを語っていただきます。(インタビュアー・上本洋子)

山田淳子さん

山田淳子さんプロフィール

1952年大阪生まれ 。大学(家政学部児童学科)卒業後、病院小児病棟にて入院患児のケアにあたる 。幼児教室「こどもの部屋」で指導と教材開発。 1986年から10年間、森本邦子氏主宰の「イキイキ子育てセミナー」の運営とサポートにかかわる。 子育てアドバイザーとして各地で講演、講座講師として活動開始(1994年~)。1996年、東洋合成工業株式会社に入社、2004年に 総務部専任コーチに異動。 株式会社Atsuko Bounce設立 (2006年~)。国際コーチ連盟マスター認定コーチ。日本ファシリテーション協会所属。

自ら働きかけてコーチング研修を社内展開

コーチングをすることによって、混沌としている自分の問題が客観的になり、整理しやすくなります。つまり、“シンプルな人生” を送れるようになります。私はコーチングによる問題解決のおかげで、「人生を軽快にする自分の育て方」を学びました。これは研修のタイトルにも使っています。

このように、コーチの活動をしていくうちに、会社の仕事よりも比重が高くなり、さらに個人コーチング以上に、集団に働きかけるセミナーや研修のほうが、楽しくて、楽しくて仕方がなくなってきました。

最初、会社(東洋合成工業)は私がコーチングをしていることは知りませんでしたが、徐々に伝わるようになりました。私のコーチングを知って応援をしてくれる人が数人いて、そういう人たちが部下とか周りの人に「悩んでいるなら山田さんの所に行って話してくれば」とおっしゃってくれて、相談にくる方もいました。そこで私は、業務の一環としてセミナーをやらせてもらえるよう、総務部に直談判したのです。それが海外から戻ったばかりの専務に知られることになりました。専務は反対するどころか「講師をお願いしているのなら謝礼を支払いなさい」と総務部に言ってくださって、理解を示してくれました。正規の給料はいただいているのですが、手当を上乗せしていただくほどでした。

そこで認められたことがきっかけで、2003年に再度専務に体当たりして、「もっと規模を広げたコーチング研修をやらせてください」とお願いし、研究所全員が受講する研修に発展しました。最初はまだ、実験助手の肩書のままやっていましたが、それから専用の部屋まで設けてもらえるようになりました。

予想を超えていたコーチングの「成果」

コーチングをすることに最初は会社も戸惑いがあったと思います。形を社内で整えるまでが大変ですし、コーチングのフレームを理解してもらうまでが苦労しました。コーチングで業績が上がると、直接は証明できませんが、「しかし、何らかの変化があることは確信しています」と総務の人からも期待されました。

そこで2007年3月までの間に、私の研修を受けた人にアンケートをしたところ、いろいろな成果が明らかになりました。さまざまな形で上司・同僚・部下への働きかけが改善されていたのです。「打ち合わせの時間が短縮された」「自分の意見をまとめてから言えるようになった」「迷いがなくなった」「自分だけでできないことは人の手を借りられるようになった」。効果を実感できている人は、このように具体的に記述してくれました。会社にはっきり「効果はこうです」と示していなかったにもかかわらず、私が思っていた以上に、まるでコーチングの教科書に出ているような具体的な成果が表れて、本当にうれしかったです。

以後ヒューマンスキル系研修は山田ということで、会社を辞めた今も、東洋合成の企業内コーチを続けています。女性社員研修、リーダーシップ研修なども担当。コーチングのフォローアップは3つの事業所で行っています。

コーチングの例をお話しします。ある初対面の若手社員が山積みの資料を持って相談室に来ました。取引先とのコミュニケーションの悩みだったのですが、最初何を話せばいいのか要領がわからないままモジモジしていました。30分ほど話を聞くうちに、急にハッとなって資料をバタバタ片づけ部屋を飛び出し、自分の机に戻っていった。追いかけてみると、後ろ姿がメラメラと燃えあがるようにパソコンに向かっていた(笑)。セッションの中で「先方に伺った時、あなたはどういう位置で座り、話を聞くの?」と具体的なイメージで問いかけていくうちに、彼の中で問題解決のヒントが湧き出てきたんですね。

毎回そういうことばかり起こっているわけではありませんが、コーチングでは一つひとつの働きかけをしていくうちに、本人の中で問題のありかが、だんだんとつながってくるのだと思います。相手にそういう変化が起きた時、コーチとしてもやりがいを感じます。

女性のリーダーシップ養成に力を入れる

2006年にはビジネス書も執筆(『コーチング』、ファーストプレス刊、井上将志氏と共著)。このビジネス書に取り組んでいたころ独立しました。締切りのきつさや慣れない執筆作業の厳しさで体調を崩してしまって。会社は「独立しても、今までの条件で会社に籍を置いていいよ」と引き留めてくださったのですが、月12日間の嘱託勤務日数もこなせそうになく、勢いで会社を辞めてしまいました。

社名の「アツコバウンス」は、“弾む”という意味から名付けています。仕事で大きく弾むためには、自分自身の安定感や基本もしっかりしていなくてはいけない。自己基盤をしっかりすることは、「地に足をつける」ことといえます。足の裏を地面にしっかりつけて踏ん張る人こそ、大きく跳ぶことができるんだよ、というメッセージを込めています。

研修で「明日から使えるスキルを教えてほしい」と表面的なことを求める人がいますが、伝えるのは簡単でも、問題はそれを身につけて自分自身が変わること。教える内容が本当にその人の血肉となり、一部となれるような研修をやりたいと考えています。

私が提供できる強みの1つに、女性社員のリーダーシップ育成があります。女性は男性管理職と同じ研修をやっても効果的ではありません。女性には結婚・出産・育児・介護等々、女性ならではの人生の転機があって、その選択肢の中で働き方を決めている。人生の変化に応じて、能力開発のアプローチが違います。また、男性より女性の方が、自分自身の内側を見つめてみたい、という欲求があります。そういう特質を生かして、潜在能力を引き出してあげる人材開発が効果的だと思います。男性は逆に、仕事にのめりこんで会社には忠誠を尽くしていても、自分の内側など別に見たくないという人もいますしね(笑)。

私自身女性として、いったん家庭に入ってから再び職を得るのに苦労しました。46歳で東洋合成に入社しましたが、その前は苦労の連続。幼児教室の閉鎖の後、33、4歳のころ軒並み採用試験で断られたこともあります。せっかく採用されたと思えばひどい職場だったり。そのようにあちこちぶつかって、たんこぶだらけでキャリアを築いた経験が、コーチとして、研修講師として生きていると思います。

女性リーダー育成といっても、バリバリのキャリアウーマンの講師が話す内容とは違い、皆さんに寄り添う目線で語れるのではないかと自負しています。

講師として本当に伝えたい言葉にこだわる

今は企業向けの研修はもちろん、行政向けの研修もやっています。企業人の場合、会社から研修に派遣される人が大多数ですが、行政関係主催の私のセミナーは、自発的に申し込む人が多いです。定員30人に対して60人が申し込むこともしばしば。よく来てくれる追っかけのような受講者もいます。

講師として、今こだわっているのは、伝えたいことをうまく伝えられるキーワード探しです。「人生を軽快にする自分の育て方」もキャッチフレーズの1つですが、毎日名文句を一所懸命探し、人の言葉でも心に残るもの、ひっかかるものを書きとめて、研修の場で積極的に使っています。おかげで、伝えたいことが本当に伝わる瞬間が増えてきたように思います。それに大阪が自分のアイデンティティですので、地をさらけだすような場面に応じて大阪弁を使っています。

大阪弁といえば、2007年は自分の新しい能力開発もしました。志縁塾(代表・大谷由里子氏)主催の「リーダーズカレッジ」の受講生になりまして。企業人やさまざまな社会人の参加者がチームになって吉本新喜劇の舞台に立つというプロジェクトを体験しました。受講生同士がボケ・ツッコミ役をやって「何でやねん!」パシーッ、と叩いていました(笑)。9月に舞台発表があり、私は大阪のおばちゃん役、しかも主役です。舞台づくりを通じて、楽しくチームビルディングを体感できる。これはとてもいい経験になりました。

こういうチャレンジをするのも、偶然のきっかけのようでいて、実は日頃いろんな情報にアンテナを張って意識しているからこそ。何かに迷ったときなど、注意深く周りを眺めていると、向こうから目に飛び込んでくるような、引っかかる情報がある。これだ、と思ったらすぐにコンタクトをとってみる。

大体そういう時は「当たり」です。

受講生同士が活発に交流する研修の仕掛け人に

独立して会社を立ち上げたからには収益も重要ですが、それよりも、輪を広げるような仕事をしていきたい。講師として喜びを感じるのは、皆の顔が輝いているときですね。3回くらいの講座だと、1回目は難しい顔で聞いていた人が、2回目、3回目となると身を乗り出して「ウン、ウン」うなずきながら聞いてくれている(笑)。「僕はあまりこのセミナーには期待していないけどね」と斜に構えていた年配の男性が、最後は生き生きした表情になっていたこともあります。

受講者同士が活発にコミュニケートする場をつくったときも、充実感を覚えます。研修の予定時間が終わっても皆の話が止まらないようなときは、講師冥利に尽きます。研修の進行にしたがって参加者が交流できるように、プログラムも工夫しました。3回通しの研修なら、2回目のランチタイムには、受講者同士が親密に話ができるような仕掛けにしています。受講者が何かができそうな予感に満ちるような場の「仕掛け人」を目指しています。研修をきっかけに、自分で幸せを創り出す人たちが増えていく。そんな仕事を今後も手がけていきたいですね。